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SBCラジオ(こんにちはドクター)前立腺癌について

SBCラジオ放送内容

FAQ形式で放送させて頂きました

前立腺癌について


最近前立腺癌という病気をよく耳にするように思いますが、そもそも前立腺とはどういうものでしょうか?     

前立腺は、元々男性にしかないもので、ちょうど膀胱の出口で尿道を取り囲むようにしてあります。
精のう腺の前にあるので前立腺と名前がついています。
栗のような形をしていて、大きさも大きめの栗ぐらいです。
役割としては、前立腺液という分泌液を作っており、これは精液の一部になります。
前立腺液には精子が運動しやすいようにする役割があります。
しかし、前立腺はおよそ40代でこういった役目を終え、その後はあまり体の中での用をなさないとされています。


前立腺癌は増えているのでしょうか?     

はい、もともと前立腺癌は欧米で多く、日本人は少ないとされていましたが、近年非常に多くなってきています。
これは主に食生活の欧米化に伴って とされています。
1998年のがん統計の罹患率では、男性の癌の6番目でしたが、2005年の罹患率は、胃がん、肺がん、大腸癌についで、第4位になっています。
前立腺癌は今後も増えることが予想されており、2020年には肺がんに次いで、2番目になると予想されています。


おいくつぐらいの方が かかられるのでしょうか?     

50才頃から少しずつ増えてきて、年齢とともに前立腺癌にかかられる方が増えてきます。


前立腺というと、前立腺肥大症もよく聞きますが、前立腺肥大症からがんになるのでしょうか?     

前立腺肥大症と前立腺癌は全く別の病気です。
肥大症は前がん状態ではなく、肥大症があるから がんになりやすい、ということはありません。
また、逆に肥大症があればがんにならない ということもなく、肥大症があって、それに癌が併発することもあります。


前立腺癌には、どのような症状があるのでしょうか?     

前立腺癌は元々症状に乏しく、初期の前立腺癌ではほとんど自覚症状はありません。
しかし、前立腺が癌で大きくなりますと、尿が出にくいといった排尿困難や、排尿回数が多くなる頻尿、排尿後も残った感じがしてすっきりしない残尿感、、排尿したいと思うと我慢が難しいという尿意切迫感 などが出てきます。
また血尿になることもあります。
いずれも、前立腺肥大症とよく似た症状です。
また、前立腺癌は進行すると、非常に骨に転移しやすいという特徴があります。
特に背骨に転移すると腰痛になったり、足の動きが悪くなったりします。これらの症状の原因を調べてみて、前立腺癌が発見されることがあります。
転移を起こした骨はもろくなりますので、少しひねったり、力がかかったりしただけで骨が折れてしまい、その骨折の原因として前立腺癌が見つかることもあります。


初期には前立腺癌は症状に乏しいとのことでしたが、早期発見するにはどのようにすればよいのでしょうか?     

前立腺癌の早期発見には血液検査で 前立腺特異抗原 というタンパク質の量を量るのが有効です。
前立腺特異抗原は英語の頭文字をとって PSA ともいいます。
前立腺癌検診や、PSA検診の名称で、最近では多くの自治体で、住民検診のメニュー項目になっていますし、人間ドックではほとんど入っています。
住民検診では50才以上を対象とする自治体が多いのですが、お住まいの自治体で異なっています。また、自己負担金も無料から2000円程度まで、これも自治体によって様々です。
詳細は、お住まいの市町村の保健課や福祉課にお問い合わせ頂ければ宜しいかと思います。


その 前立腺特異抗原 PSA というのはどういうものですか?     

前立腺特異抗原 PSA は前立腺で作られるタンパク質で、精子が動きやすいように精液をさらさらにする働きをしています。
精液中にはたくさんありますが、血液の中にはほとんどありません。


前立腺癌の時にどうして血液中のPSAが高くなるのでしょうか?     

前立腺が、癌になるとがん細胞がどんどん増えてくるのですが、がん細胞は増えるだけでなく、どんどん壊れてゆきます。
そのとき、がん細胞の中のPSAというタンパク質が血液中に出てきますので、前立腺癌の時は血液中のPSA濃度が高くなります。


ほかの癌の時にもPSAは高くなるのですか?     

いいえ、PSAは体の中で前立腺でしか作られないタンパク質ですので、通常は、胃がんや肺がんなどのほかの癌で高くなることはありません。
前立腺からできる癌細胞では、その細胞の中にPSAというタンパク質を多く持っているので、そのがん細胞が壊れるときにPSAが血液中に出てきます。
ですから、特に前立腺癌の時に高くなります。
しかし、 癌以外でも、前立腺肥大症や、前立腺の炎症、といった前立腺の病気の時には、PSAが高くなることがあります。


以前、前立腺癌検診はあまり意味がない と聞いたこともあるのですが・・・     

前立腺癌はご高齢の方に多く、また、癌自体も発育がゆっくりであることが多いので、あまり生命に係わらない、あるいは癌検診をしても前立腺癌による死亡率を下げないのではないか と言われていたことがあります。
しかし、前立腺癌検診を取り入れることによって、アメリカのミネソタ州、カナダのケベック州、オーストリアのチロル地方の疫学調査や、アメリカとヨーロッパで行われた大規模無作為比較対照試験で、前立腺癌の死亡率減少が明らかになっています。
たとえば、アメリカでは50才以上の男性の7割から8割の方は前立腺癌検診を受けており、 1990年後半からアメリカ全体で前立腺癌による死亡者数が減少してきています。
一方、日本では、前立腺癌の検診受診率が5%から10%に過ぎません。死亡者数も一貫して増え続けています。
ですから、日本でも、前立腺癌による死亡者数を減らすためには、前立腺癌検診をもっと多くの方に、お受け頂くことがとても大事だと思います。
前立腺癌検診は血液検査ですので、わずかに血液を採らせて頂くだけですし、他のコレステロールや腎機能や肝機能の検査の採血と一緒の血液で検査できますので、一般的な健康診断の時、一緒に検査して頂ければよいかと思います。



PSAの正常値はいくつですか?     

基準の値として、4.0ng/ml 未満を正常とすることが一般的です。



PSAが4を超えるとがんと考えてよいのでしょうか。     

いいえ、先ほどお話ししたように、PSAは癌以外でも、前立腺肥大症や、前立腺の炎症、といった前立腺の病気の時にも上昇してきます。
たとえば、PSAが4から10の方で前立腺の組織検査をすると約3割の方で癌が見つかりますが、7割の方は癌ではありません。
ですから、4から10の値をグレーゾーンといい、組織検査などをしないで、経過観察をさせて頂くこともあります。
しかし、 PSAが高くなればなるほど癌の見つかる割合も増えてきます。 特に30を超えると半分以上の方で癌が見つかります。
前立腺癌と診断するには、前立腺の組織を一部取ってきて、病理学的に診断し、がん細胞を確認して がんと診断するのが一般的です。



どのように前立腺の組織を取ってくるのですか?     

通常は肛門から超音波の機械を挿入して、前立腺を観察しながら、細い針を前立腺に刺して、前立腺の数カ所から組織を取ってきます。
それを病理学的に癌の細胞があるのかないのか、また、癌の細胞があるとしたらその悪性度はどうか ということを診断します。



前立腺の組織を取る検査は 痛いのでしょうか?     

通常は局所麻酔や脊椎麻酔、仙骨〔硬膜外〕ブロックといった麻酔をして、この組織検査をします。麻酔をしますので、検査自体はほとんど痛くありません。
麻酔にしても、それぞれの施設で異なりますので、実際の検査をお受けになる施設でよくご相談ください。



前立腺の組織を取る検査はどこでできるのでしょうか?     

長野県内ですと、常勤の泌尿器医のいる病院と、泌尿器科専門医の診療所やクリニックで検査を受けることができます。
施設によって、日帰りから2−3日の入院で検査を行うところまで、様々ですので、そちらも実際の検査をお受けになる施設でよくご相談ください。



前立腺癌にはどのような治療がありますか?     

内分泌療法といってお薬を使う治療と、放射線治療と手術療法の3つが、治療の柱になります。



それぞれの治療について教えてください。     

まずお薬での治療ですが、前立腺癌は体の中の男性ホルモンの働きで増殖する特徴があります。
この男性ホルモンの働きを抑えるお薬を使い、癌の発育を抑える治療法です。
癌の発育を抑える薬ですので、抗がん剤 になりますが、胃がんや肺がんなどのほかの癌に対する抗がん剤と違って、吐き気や脱毛、骨髄抑制といった重篤な副作用はほとんどありません。
ただし、体の中のホルモンバランスが崩れますので、男性であってもお乳が張ってきたり、すれると痛い、あるいは女性の更年期のように急に火照るといった副作用があり、これらはほとんどの方で経験します。
しかし、いずれも重篤な副作用になることはまずありません。
お薬は、1ヶ月に1回の皮下注射と毎日の内服薬の併用です。
注射薬には3ヶ月効果の持続するものもありますので、落ち着いている方では3ヶ月毎の注射にすることもあります。

次に放射線治療ですが、放射線治療には大きく2つ有ります。
前立腺の中に放射線を出す小さな金属の棒を入れる、小線源療法 という方法と、 体の外から前立腺に放射線を当てて、癌の発育を抑える、外照射法です。
重粒子線や陽子線治療も放射線治療の外照射に含まれます。
また、前立腺癌の進行度や悪性度によっては、小線源療法と外照射法を組み合わせることもあります。

3番目の手術療法ですが、これは、前立腺に癌が限局しており、他に転移がないとき、癌の根治を目指すために行います。
前立腺及び精嚢腺を一緒に摘出します。前立腺は骨盤の非常に深いところにあって、また、前立腺の前側には静脈が発達していますので出血もしやすく、難易度の高い手術の一つです。
しかし、近年の手術器具の発達や、前立腺付近の緻密で詳細な解剖が明らかにされるにつれて、現在ではかなり安全に手術が行われるようになっています。
合併症としては、尿失禁やインポテンツが挙げられます。
いずれの治療法を選択するか、あるいはどのように治療法を組み合わせて行うかは、それぞれの方の、病気の進行度とがん細胞の悪性度によります。



最後に、前立腺癌も他のがんと同様に、早期発見、早期治療がとても大事です。 そのためにも、是非、前立腺癌検診をお受け下さい。 50才以上の男性であれば年に1回、血液検査をお受け下さい。 また、お父様や、ご兄弟で前立腺癌の方がお有りでしたら、45才から是非検診をお受け頂きたいと思います。


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